第113章 決心〜冨岡義勇【微R】
翌日も、義勇と幸は変わらず無一郎の屋敷へ足を運んだ。
ゆきは幸とは普通に会話を交わすものの、あからさまに義勇を避けていた。
昼休憩にはきちんとお茶とおにぎりを運んで来てくれたが、義勇とは一度も目を合わせようとしない。
その頑なな態度が、ゆきが義勇に壁を作っている証拠だった。
道場での稽古を終え帰路につく前、幸は診察のためにゆきの部屋へと入っていった。
避けられている自覚はありつつも、ゆきの体調が気になって居ても立ってもいられない義勇は、廊下に佇んだまま部屋の様子を窺う。
だが、待てど暮らせど幸が出てくる気配はない。
痺れを切らした義勇が襖の前に立ち、「やけに長いが、もう済んだか?」と声をかけると、静かに襖が開いて幸が顔を出した。
「師範、実は部屋に入った時にはすでに眠っていらっしゃって……起きるのを隣で待っていたんです」
幸の肩越しに中を覗くと、ゆきが畳の上で小さく丸くなって眠っていた。
「幸…先に戻れ。今夜は警備の任務もある、少し休め」
義勇はそう告げると、幸に有無を言わさず部屋の中へと足を踏み入れ、背後で静かに襖を閉めた。
部屋の中に満ちる規則正しい呼吸音。
畳に横たわるゆきの寝顔はどこか痛々しく、昨日の涙の痕を残したまま疲れ果てているようにも見えた。
義勇はその傍らにそっと膝を折る。
触れれば再び拒絶されるかもしれない…。
昨日の光景が頭をよぎるが、そっと伸ばした指先で、頬にかかった髪を耳へと掛け直した。
伝わるわずかな体温が、切ないほどに愛おしい…。
「…すまない、俺が勝手に、お前を抱いたから…色々とお前の状況を狂わせている。辛い思いをさせている…。」
届くはずのない謝罪を呟き、義勇は溢れ出そうな想いを静かに胸の奥へ押し込めた。
ゆきの心が時透にあろうと、側で守り続けることだけは諦めない…。
義勇は、そっとゆきのお腹に手を伸ばす。
「俺の子かもしれない…」
眠るゆきの頬に唇で軽く触れる。
その時、ゆきが目をゆっくり開き、頬に触れる温かい感触と圧に気がつく…。