第26章 痕跡 ✴︎
「俺も…嬉しい。」
嬉しい、と言いながら
フワッと微笑む冨岡さんは
夜道の薄暗い道で見てもカッコ良過ぎて…
冨岡さんも照れ臭く思ってる様子で
その後の私達は、特に会話をする事なく
黙ったまま手を繋いで歩き続けた。
しばらくすると蝶屋敷が見えて来て
門の前に立ち止まり、冨岡さんにお礼を伝えた。
『送って頂いて、ありがとうございました!』
「あぁ…、」
『えっ、と……、じゃあ…』
「…。」
繋いだままになっている手を離したくなかったけど、冨岡さんはこれから仕事に向かうんだ…、
寂しいけど、我慢して手を離さないといけない。
かなり名残惜しい気持ちになりながら
お互いにスッと手を離すと、焦燥感が半端なく私を襲って来た。
屋敷にいる時は長い時間
ずっと冨岡さんと触れ合ってたのに
まだ足りないのかな…、と
自分で思ってるよりも冨岡さんへの気持ちが大きくて、体が冨岡さんを欲していることを自覚していたら、冨岡さんの落ちついた声が耳に入って来た。
「…、またな。」
『っ、はい、また…。』
そうだよ…。
別れを告げられた時と今はもう状況が違う…。
きっとまたすぐに冨岡さんと会えるだろうし
一緒に暮らすことを私が決めれば
共に過ごせる時間も増えるんだから…。
寂しくない、と言えば嘘になるけど
冨岡さんは私の事を想ってくれてる…
そう考えると自然と笑顔になれて
警備に向かう冨岡さんを笑って見送ることができる。
『お体に気をつけて、頑張って下さいね?』
「…。」
『…??
冨岡さ……、っ…!』
笑って見送る私を見た冨岡さんは
何も言わず、いきなり私の唇にキスをして来て…
優しく重ねられた唇は数秒経つと離れて行き、
私は突然キスをしてきた理由を尋ねた。