第26章 痕跡 ✴︎
屋敷を出てからすぐ、
冨岡さんは私の手を取って歩き出した。
こんな風に手を繋ぎながら夜道を歩くなんて
もう二度と出来ないって思ってたけど…
手から伝わってくる冨岡さんの温もりが
夢じゃなく現実なんだって思わせてくれる。
私の手より大きくて、温かい冨岡さんの手は
繋ぐだけで穏やかな気持ちになれて落ち着く…
もう二度と、この温もりを失いたくない…。
そんな風に思った私は、繋いでいた手に無意識に力が入り、もちろんそれはすぐに冨岡さんに気付かれて
私の方へ視線を向けていた。
「すまない…、
同意も得ずに繋いでしまって…、不快だったか?」
『い、いえ!!
冨岡さんと手を繋げるなんて
嬉しい気持ちしかないです!!』
「ん…、そうか…」
『私…、またこんな風に
冨岡さんと触れ合えるとは思ってなかったし
さっき鍵を渡してくれたのも嬉し過ぎて…、
この間までは
辛過ぎて泣いてばっかりだったから
今こうしてるのが
夢を見てるのかなって思うくらい幸せなんです…。もう離れ離れになるのは嫌だなって考えてたら
無意識に力が入っちゃって……
…って、すみません!!
なんか長々と変な事を語っちゃって…!!』
正直に話し過ぎたせいで
ひょっとしたら引かれたかもしれない…、と思っていると、今度は冨岡さんが繋いでいる手に力を入れてくるのを感じた。
「俺がお前の手を取ったのも…同じような理由だ。」
『っ、え…?』
「一度は手放したが
俺の元に戻って来てくれたこと…、
未熟な俺を好きだと言ってくれたこと…、
今、が側にいてくれること…。
言葉では言い表せないほど嬉しいから
現実だと実感したくなり、気が付くとお前の手を握ってた。」
まさか冨岡さんが私と同じように
そんな事を思っていたなんて…、
凄く驚いたけど
好きな人と同じ事を考えてたのは
くすぐったくて照れ臭いけど…
『えへへっ…、何だか…すごく嬉しいです!』
自然に自分の顔が笑顔になって
私もギュッと強く手を握り返した。