第26章 痕跡 ✴︎
「の笑顔を見ていたら
口付けたくなった…。」
『っ…』
「可愛くて眩しいその笑顔が…
また近くで見られるようになって…
…嬉しい。」
『それは…、
冨岡さんがいてくれるからですよ…』
この時代に来て鬼に殺されそうだった私を
冨岡さんが助けてくれて、命を救われたあの日から、幸せだと思える日々を過ごせるようになった。
鬼殺隊に関わる色んな人達と出会って
鬼狩りの仕事や鍛錬とか、大変だと思う事もあったけど
令和時代にいた頃の自分とは
比べ物にならないほど笑う機会が増えた…、
大切な人達もたくさんできた…、
冨岡さんと出会ったことで、今の私があるんだ。
『冨岡さん…、本当にありがとうございます。』
「礼なら先程も聞いたが…」
『えへへっ、色んな意味を込めてのお礼です!』
「…??」
私のお礼の意味が分かっていない様子の冨岡さんは、そろそろ仕事に向かうようで、真面目な顔つきに変わった。
『お気をつけて…、警備、頑張って下さいね。』
「あぁ、…行ってくる。」
私に背を向けて歩き出した冨岡さんは歩くのが早くて、あっという間に夜道の奥へと消えて行った。
そんな冨岡さんの後ろ姿を見送っていた時、私は気付いたことがあった。
『冨岡さんの羽織り…
ほつれてる所見つけちゃった…』
羽織りの左側の後ろ部分…
錆兎さんの形見が使われている方に
僅かだけど糸がほつれて破れかかっているのを見つけた。
『…よし!今度会えた時に直させてもらおう!』
幸いな事に
今日の昼間、鱗滝さんから
錆兎さんの形見だった布を預かってるし…
早速その布を使わせて貰えることに嬉しく思いながら、私は蝶屋敷の中に入って行った。