第25章 意識
『はぁーー…、危なか、ったぁ……』
…誰かに心配されるだけで
こんなにも涙腺が緩むとは思わなかった。
不死川さんは、いつものような鋭い目つきではなく、私の事を憐んでいるような、悲しそうな目をしてたから…
『うっ…うっ……、ぐすっ…』
あんな顔をされたら、思い切り泣き喚いちゃいそうになる…
そうならない為にも
1人きりになった台所で、声を押し殺しながら涙を流した。
少し泣いておけば
不死川さんの元に戻った時に涙は出ないはず…。
だから今のうちに少しだけ泣いておこう。
『うぅっ……、とみお、か、さ…っ』
失恋がこんなにも辛いなんて知らなかった…。
自分の意思とは関係なく勝手に涙が流れて来て、流れを止めようとしても上手くできない。
令和の時代にいた頃、同級生の女の子達が
"彼氏にフラれた"とか、"告白したけど上手くいかなかった"とか、友達同士で慰め合って泣いてる子を何度か見た。
その時私は、可哀想だなって同情はしてたけど
心の中では他人事に思ってて、恋をして悲しい思いをするくらいなら、人を好きにならなきゃいいのに…
そんな風に思ってた。
自分も体験してみて分かったけど
恋をすることは理屈じゃないんだ…。
一度好きになったら簡単に忘れられない…
気がつくとその人のことばかり考えてる…
自分の幸せより、相手の幸せを願う…
私は本当に冨岡さんのことが好きなんだと…
零れ落ちる涙を拭いながら
恋をして、失恋をした辛さを痛感した。
『ふっ…ぅ…、はや、く…、止まって、よぉ…』
さっきの場所に戻ったら
ちゃんといつも通りの私を演じないといけない。
不死川さんに気付かれないように
小さく呻いていると、台所の入り口から声が聞こえて来た。
「…おい、1人で泣いてんじゃねェ、」
『!?!?し、不死川、さん…?』
最悪だ…。
柱の人が気配を消すプロだって分かってたのに
泣いていたことで、全く意識して注意を払ってなかった。