第45章 輝く舞台、愛される存在
マイクをセットし、は静かに息を吸い込んだ。
ライトに照らされた視線が一斉に自分へ集まるのを感じる。
「えー……。まずはごめんなさい。実は、ほとんど何も聞かされていなかったので……本当にびっくりしています。歌うことも、ついさっき知りました。それに、本来は生徒たちが主役の文化祭なのに……私なんかがステージに立っていいのかなって、少し思ったりもして」
柔らかい声がスピーカーを通して広がり、ざわついていた会場がストンと落ち着く。
「でも……忙しいはずなのに、こんな素敵な衣装まで作ってくれて。こんな素敵な場所を準備してくれて。……私は今、すごく幸せです」
その一言で、会場の空気がさらにほぐれる。
優しく、胸の奥を撫でられるような声だった。
「そのお返しになるかは分からないけど……感謝を込めて、この曲を」
ふぅっと息を整えると、指先がギターの弦に触れた。
爪弾かれる最初の一音。
それだけで、会場の温度が変わった。
指が弦を滑り、やわらかな音が空気を震わせる。
その旋律に、の声がそっと寄り添う。
透き通るようで、でもどこか人肌のあたたかさを含んだ声。
乾いた心にしみ込むみたいな、不思議な響き。
その瞬間、会場の呼吸が止まった。
本当に、吸うのを忘れたみたいに。
生徒たちは“だけの声”を初めて真正面から浴びて、ただただ目を見開いていた。
「……っ」「やば……」
誰かの小さなつぶやきすら邪魔に思えるほど、その声は全部を包み込んだ。
だがA組の生徒たちだけはちょっと違っていた。
彼らは知っている。
この声がどれだけ優しくて、どれだけ力強いかを。