第43章 響く歌声、癒される心
抱きしめられたまま、は呟いた。
「音楽って、凄いんですよ。言えない気持ちも、音楽に乗せれば伝わると思うんです」
相「そうだな…さっきも、誰かを思い浮かべてたんだろう…?気持ちが痛いほど、伝わってきた気がするよ。…幸せ者だな、そいつは」
その言葉に、はほんの少し眉を下げる。
「……そうです、かね」
でも、背中に回した手は少しだけ力を込めた。
(消太さんがいるから、辛い時も、息を吸っていられる。立っていられる。……あったかい)
2人の間に、柔らかい沈黙が降りる。
どんなに信頼し合っていても。
どんなに愛し合っていても。
どんなに心が寄り添っていても。
言わなければ、伝わらない。
がそっと力を緩めた瞬間、相澤も抱きしめる腕を緩めた。
目が合う。
呼吸が触れ合う距離で、意識が絡む。
どちらともなく、唇が重なった。
ほんの一瞬。
けれど、互いの想いが確かに乗っていた。
相澤は、込み上げた気持ちを必死に押し込めながら、
相「っ…また、聴きに来てもいいか?歌」
「もちろんです」
その返事に安心したように、相澤はもう一度、をそっと抱きしめた。
「消太さん…っ」
相「………」
どうしてこんなにも気持ちが溢れるのか。
が自分の心臓を握ってしまったかのように、苦しいほどに愛おしい。
ずっと抱きしめていたい。
離したくない。
でも、言わない。
困らせたくない。
自分の気持ちに蓋をして、いつも通りの顔をつくる。
強く抱いた腕を離し、相澤はやっと背を向けた。
相「ありがとう。コーヒーもごちそうさま。また…来る」
「はい」
はふわりと優しく笑い、その背中を見送った。