第43章 響く歌声、癒される心
は、自分の言った言葉を思い返し、ハッと恥ずかしくなった。
「急に詩的でしたよね…!?私の好きなバンドの曲で…」
相「そういう歌があるのか?」
「はい。彼の鳴らす音楽と書く詩がとても好きなんです。この前、消太さんが来る前、A組のみんなに歌った曲も、その人の曲でした。ずっと、好きなんです」
コーヒーを両手で包みながら、照れたように話す。
相澤は、胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
向けられた“好き”の矛先はただの音楽だ。
それなのに、どうしてこんなに苦しくなる?
相「…もっと、教えてほしい」
その声は、思ったより少し低く、少しだけ掠れていた。
知りたい。
の“好き”を。
好きな曲、好きな言葉、好きな想い。
全部、自分の中に取り込みたい。
「もちろんです。いい歌詞ですよね」
違う――いや、本当は違わないけれど。
その“好き”に触れれば触れるほど、もっと深くを知りたくなる。
相「が…歌えるか?」
「歌えますけど…でも、私なんかより調べたら本人が歌ってるやつ聴けますし…」
相「の声で、聴きたい」
一瞬、空気が揺れた。
は恥ずかしそうに目を伏せながら、「わかりました」と小さく返事をし、ギターを取りに行った。
相「ギターはいつから?」
「小学校くらいからです。彼の音楽を聴き始めてから。…かっこよくて」
ギターを抱えて座り、チューニングのために視線を落とす。
長い睫毛が伏せられるたび、その影が頬に柔らかく揺れた。
「じゃあ…さっきの、地球の話の、歌を…」
消え入りそうな声で言ったあと、すぅ……と空気を吸う。
そして、正面に座る相澤へ――
相澤に向けて歌う。
相澤を想いながら歌う。
指先が弦を弾く瞬間、部屋の空気が一度止まった。
相澤は、吸い込まれるようにを見つめた。
指先の動き。
そっと開く唇の形。
言葉が音に変わる瞬間。
そしてゆっくりと顔を上げたときに重なった、あの瞳。
その瞳に自分が映っていることが、信じられないほど嬉しかった。
ふたりきりの部屋が、ふたりだけの世界みたいに静かで優しい。