第42章 戻らない未来、守りたい命
その翌日、通形は退院していった。
もちろん、の病室に顔を出して。
通形は昨日よりずっと明るい表情で、もようやく笑顔を返せるようになっていた。
そしてはゆっくりベッドを降り、スリッパの音を小さく響かせながら病室を出た。
向かった先は、同じフロアの端。
コンコン、と優しくノックする。
返事はなかったが、怯えさせないようゆっくりと扉を開けた。
ベッドの上に、小さな女の子が一人。
両膝を抱え、肩をすぼめている。
その表情は固く、まるで世界のすべてを疑っているような、痛々しいほどの怯えがにじんでいた。
「壊理ちゃん」
柔らかく透き通る声が病室に溶け込む。
壊「あ…、おねえさん……」
「こんにちは。体調どう?少しお話しない?」
壊「…うん。する。おねえさん、おなまえ……おしえて」
はそっと微笑み、簡単に自己紹介をした。
壊理はぎこちなく頷きながらも、ずっと目を伏せたままだ。
そして、ぽつりと。
壊「あの……さん。ごめんなさい……わたしのせいで……いっぱい、けが……」
壊理の小さな声が震え、涙がぽろりと落ちた。
その涙は幼い子どもの泣き方ではなく、罪を背負わされた子どもの泣き方だった。
は胸がぎゅっと締め付けられる。
ベッドのそばに腰を下ろし、壊理の視線の高さに合わせる。
決して急がず、決して脅かさず、ただそっと傍に寄った。
「壊理ちゃんのせいで傷ついたんじゃない。壊理ちゃんが傷つけられてきたことに、わたしの心が痛かっただけ」
壊理「……っ」
「だからね……泣いていいの。痛かったね、怖かったね。でももう、大丈夫だからね」
その言葉を聞いた瞬間、壊理の小さな肩が震え、堪えていた涙が静かにこぼれ落ちた。
はそれを、そっと受け止めるように寄り添った。
泣いて疲れたのか、の胸の中ですーっと眠りについた壊理。
ゆっくりと起きないように寝かせて、は病室を出た。
心は温かかった。