第42章 戻らない未来、守りたい命
夕方。
相澤は仕事を終え職員室を出て、帰宅するはずの足が自然と別の方向へ向いていた。
決して近くない。
むしろ、遠い場所。
それでも相澤は迷わなかった。
"会いたい、顔が見たい"
その一心で、相澤は夜風の中を車で走った。
ただ、がどんな顔で夜を迎えているのかが心配だった。
病院に着く頃には、空はすっかり藍色に沈み、外灯の光が心細く揺れていた。
相澤は受付に言う。
相「……面会、少しだけでいい」
声は相変わらず低く静か。
けれど疲れと、不安と、強い決意が混じっている。
そしてあの静かなノックの音がまた響く。
相「……入るぞ」
いつもの低い声なのに、昨日より柔らかい。
扉を開けると、ベッドから体を起こしていると目が合った。
「消太さん…?」
ドアを開けた瞬間――
その声を聞いた瞬間――
相澤の肩がふっと落ちた。
強張っていた何かが、ようやくほどけていく。
相「……顔、見に来た」
それだけ。
説明も言い訳もない。
遠い病院まで来た理由なんて語らない。
語ったら、自分の気持ちが溢れそうだから。
部屋の灯りがやわらかくを照らし、その姿を目に焼き付けるように見つめて、相澤は椅子に静かに腰を下ろす。
相「少しだけ……ここにいる」
まるで、それが当たり前みたいに。
だけど心の内では――本当はずっと傍にいたい。
そんな想いがじっと燃えていた。
はその気持ちが嬉しくて、ふっと笑を零した。
相「…よかった」
静かで、不器用だけど、その一言には “心底ほっとしたんだ” という深い想いが滲んでいた。
余計な言葉は何もない。
ただただ、が無事でいてくれたことに安堵している。
ただただ、に笑っていてほしいと願っている。
相「…また来る。おやすみ」
短いけれど、触れたら崩れそうなくらい優しい声だった。