• テキストサイズ

【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第42章 戻らない未来、守りたい命


翌朝。

はまだ重い身体を引きずりながらも、病室の白いシーツを押しのけて起き上がった。

窓の外は薄く曇り、空気までどこか泣いているようだった。

相澤が止めるのはわかっていた。
緑谷も、通形も、きっと何も言わず支えてくれるだろう。
でも——それでも行かなきゃいけない場所があった。

葬儀場は静まり返っていた。
誰もが泣きすぎて声を失い、白い花の香りだけがふわりと漂っている。

祭壇の中央に置かれたナイトアイの遺影は、あの日と同じ、あの優しい笑みを浮かべていた。

その前に立った瞬間、胸の奥が、ぎゅ…っと締めつけられる。

(…本当に、いないんだ)

涙は、思っていたよりもすぐに溢れた。

火葬の直前、職員が静かに声をかけてくる。

「最後のお別れを……どうぞ」

足が震えた。
歩けると思わなかった。

けれど、誰かの手が背中を支えてくれている気がした。
相澤かもしれないし、通形かもしれない。
それとも……ナイトアイ自身かもしれない。

は棺のそばに膝をついた。

目を瞑っているナイトアイは、眠っているようで、でももう二度と目を開けないことを告げる静けさをまとっていた。

ナイトアイの優しさを思い出しただけで、胸がぽたりと涙を落とす。

ゆっくりと身を乗り出し、ナイトアイの額に唇を重ねる。

昨日までの温かさはない。
その冷たさに、また胸が締め付けられた。

そして治癒の光は生まれない。
個性の気配もない。

静かで、暖かくて、祈るようなキス。

(ありがとう。助けてくれて、守ってくれて。……ありがとう)

声にはならなかったけれど、涙がぽたり、ぽたり、とこぼれていった。

通形は歯を食いしばって泣き、緑谷は胸に手を当てて震えていた。

相澤は……目元を覆い、ただ耐えるように静かに立っていた。

(未来さん……さようなら)

唇を離した瞬間、胸の奥がひどく冷えて、でもどこか少しだけ温かかった。

それは、ナイトアイが残してくれたものが、確かに自分の心に生きている証のようで。

棺の蓋が静かに閉じられたとき、は両手を胸にぎゅっと握りしめた。

もう二度と会えない事実を喉の奥で震わせながらただ、涙を流した。
/ 508ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp