第42章 戻らない未来、守りたい命
その静寂を破ったのは、荒い足音だった。
扉が勢いよく開く。
相「!!」
相澤だった。
髪はほどけ、息は乱れ、いつもの冷静さはどこにもない。
「ちょっと!あなたも出血してるんですよ!先に処置させてください!」
看護師の制止を振り切りベッドへ駆け寄ると、震える手での頬に触れそうになって……寸前で止めた。
相「……遅かったら、お前……」
低く、掠れた声。
言葉の続きは喉でつまって出てこない。
代わりに、眉間に深い皺を刻んで、じっとの寝顔を見つめた。
相「…いつもいつも…無茶ばっかりして……」
怒っているようで、泣き出しそうでもあった。
相澤はそっとの手を握った。
相「早く目を覚ましてくれ。…頼むから」
その声は、いつになく脆かった。
「行きますよ、あなたも結構重症ですよ」
相「…また戻る」
そして、眠るのまつげがわずかに揺れたことも、胸の鼓動がほんの少しだけ早まったことも——
相澤は気づかないまま、病室を後にした。
処置を終えた相澤は、他の仲間たちを巡って怪我の具合を確認していく。
最後は、緑谷のところへ。
緑「先生…、大丈夫ですか?み…みんなは?」
相澤は淡々と状況を説明する。
相「俺は10針ほど縫った。切島は全身打撲に裂傷だが、命に別状はない。天喰は顔面にヒビだが後遺症は残らないだろう。ファットガムも骨折が数ヶ所。ロックロックも軽傷で済んでいる。壊理ちゃんは熱が引かず隔離中だ」
緑「ちゃ……先生は?」
短い沈黙のあと、相澤は答えた。
相「…一命は取りとめている。だが出血が多すぎた。今も意識は戻っていない」
緑「そん、な……」
相「……聞いた話だと、治崎がの傷を“修復”したらしい。それがなければ……確実に……死んで、いたと医師が言っていた」
振り絞りながら出したその言葉に、空気が重く沈んだ。
“最も救われるべき少女を傷つけてきた男”に、“の命を救われた”という、皮肉すぎる事実。
緑「……っ」
相「行くぞ。あいつのところへ」
2人は、黙ったままの病室へ向かって歩き出した。