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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第42章 戻らない未来、守りたい命


ふと——
視界が真っ白に染まった。

まるで雪の中に立っているような静けさ。
凍える光の結晶がふわりと舞い落ち、その中に、ひとつの影が現れる。

ゆっくりと、目の前に歩いてくる。

ツンツンとした髪型。
鋭い目元なのに、表情はなぜか柔らかい。

その顔を見た瞬間、胸が締めつけられる。

(……だれ?勝己…じゃない…けど…知ってる…?)

見たことのないはずの男なのに、懐かしさが胸を刺した。

男が立ち止まり、少し照れくさそうに微笑んだ。

——また会えた。

(……また……?)

手を伸ばしかけた瞬間、何かが胸の奥で波紋のように広がった。

温かさ。
懐かしさ。
痛み。
恋しさ。

ぜんぶが雪解け水のように流れ込み、胸を満たしていく。

男はなにかを言おうと口を開いた。
その瞬間、世界が砂のように崩れ落ちる。

遠くでまた、違う人の声が聞こえる。

——さん、大丈夫ですか?
——もうすぐ病院に着きますからね。

サイレンの音が戻ってきた。

夢の男の姿だけが、溶けるように消えていく。

——待って。
——名前を、教えて。

声にならない声だけが、白の世界に落ちた。

夢の男の手は届かず、声は霞の向こうへ消えていく。

意識はまた暗闇に沈んだ。

けれど、胸の奥だけがかすかに脈打ち、温かく痛んでいた。
まるで、“忘れていた誰かの愛”が、静かに目を覚まそうとしているように。

救急搬送からすぐに処置室へと運び込まれたは、医師たちの慌ただしい声の中、次々と管をつながれていった。

「血圧低下!すぐ輸血を開始して!傷は塞がってるけど、この失血量じゃ…」
「意識レベルGCS 6……反応弱い!」

淡い光のように煌めいた夢の残滓は、現実の喧騒に押し流されるように遠ざかっていく。

体は重く、指一本動かすことすらできない。
けれど胸の奥だけが微かに脈打ち、さっきの男の笑顔だけが、はっきりと残っていた。

(だれ…だったんだろう…)

そんな想いが溶けて消えた頃、処置はようやく落ち着き、は個室へと移される。

生きている——
けれどまだ戻らない。

薄暗い病室に、機械の音だけが響いていた。

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