第40章 静かな潜入、掴んだ手がかり
治崎の瞳が、かすかに細まる。
治(癒している…?いや、細胞の“最良の状態”へと帰す感覚…?)
治「その個性、本当に“元気にする”だけか?」
「え…?はい。“快気”って、病気や怪我が良くなる時に使う言葉ですよね。私の個性もそのイメージで…触れると、細胞の働きが整って、傷や疲れが自然に癒えていくんです。ただそれだけの、シンプルな力ですけど…」
治(……いや、違う)
治崎は手袋を戻しながら、わずかに視線を落とす。
その横顔は、分析者のそれだった。
治「…俺の個性は、壊れた部品を組み替えるだけだ。元の形に“似せて”整える作業にすぎない」
静かだが、妙に冷たい声。
治「だが君の力は…手を入れた痕跡が残らない。“整った状態”そのものを、まるで呼び起こしているようだった」
淡々としているのに、言葉は皮膚の内側に沈んでくる。
そこに確かに「興味」と「危険」があった。
が何か返そうとした、その瞬間——
コン、コン。
部下が控えめに扉を叩き、顔を出した。
部下「お、頭……。お話中すいやせん。その、例のあのガ……っ、あいつの件なんですが……」
治崎のまつげがぴくりと揺れる。
の心臓も、反射のように跳ねた。
(……今、“ガキ”って言いかけた……?)
部下「ずっと監視してる数値が、さっきから微妙に動いてやして……。とにかく動きがあったんで、一応ご報告を…!」
(…監視…数値…動いた?まさか……ここにいるの?)
空気が、わずかに軋んだ。
だが——
治「……後でいい。下がれ」
部下「あ、へい!」
沈黙。
2人とも、あえて触れない。
まるで、今の単語がこの部屋に落とした影を見て見ぬふりするように。