第40章 静かな潜入、掴んだ手がかり
そして治崎は小さく息を吸い、右手の手袋を静かに外す。
「……?何して…」
パチッと乾いた微音がした。
治崎の皮膚が、小さく分解される。
赤い血が滲んだ。
「っ…!?なんで自分で……!!」
治「落ち着け。大したことはない」
穏やかな声。
その手を、へ差し出す。
治「君の個性、本当に“癒し”で括れるものか。確かめる価値はある」
「何を言って…!」
治「理由は充分だ。君の触れた時の“気配”が、常識から外れていた」
「……っ、ちょ、ちょっと待ってください。ここで個性を使うのは……状況的にも、立場的にも……」
頭の中で警鐘が鳴る。
だが治崎は微動だにしないまま、淡々と告げた。
治「…怪我人を見捨てるのか。ヒーローが?それとも何か他の理由が?」
一瞬で言葉を封じる、静かな圧。
「っ…ちが……!」
完全に逃げ道を断つような声。
挑発でも怒気でもない、ただ事実を淡々と突きつける声音。
治「君に触れた時の違和感は、私の勘違いで片付けるには雑だ。…だから“確かめたい”。怪我は小さい。今ここで治すのにリスクはないはずだ」
差し出されたままの手には、赤い血が少しだけ滲んでいる。
静かな部屋に、心臓の音だけが響く。
迷いが喉を塞ぐ。
だが、たとえどんなに小さな傷でも、それを前にして目を逸らす自分を、許せなかった。
「…っ…分かりました。…すぐ終わらせますから」
は戸惑いながらも、傷に手を添える。
柔らかな光。
ほんの数秒。
傷は滑らかに塞がり、肌の色は元の状態に整ったかのようになった。