第40章 静かな潜入、掴んだ手がかり
はゆっくり息を整え、微笑みを作ってドアを開けた。
治崎がそこにいた。
何も知らないような、冷たい顔。
その表情に向けて、はふわりと笑う。
「こんにちは。先日は本当にありがとうございました」
治「別に何もしていない。……まぁ座れ。今日はどうした」
ソファに腰を下ろした治崎をまっすぐ見つめ、は柔らかく言った。
「お礼を、と思いまして」
治「雄英教師兼プロヒーローが、こんな場所に来るのは得策じゃないだろう」
「ふふ。“ありがとう”を伝えるのに、肩書きは関係ないですよ」
治崎の目がわずかに揺れ、表情が少しだけ柔らかくなった。
だが、は知っている。
ほんの少し温度が変わっただけで、この男の先に“彼女”がいる。
治「…“ありがとう”か。君は本当に、そういう言葉をためらいなく口にするんだな」
「言わないと伝わりませんから。あの日、助けてもらえて嬉しかったんです」
治崎の眉がわずかに動いた。
その瞬間、治崎はゆっくり立ち上がる。
ソファの前に立つを見下ろして、手袋を外して手を伸ばした。
「……?廻、さん?」
治「確認したくなっただけだ」
治崎の指先が、の頬に、
――触れた。
潔癖で、人に触れないことで知られる男が。
指がそっと頬をなぞる。
まるで確かめるように。
治「…前も思ったが。君は、汚れていない。妙に、穏やかな…いや、違う。人を落ち着かせるような気配がある」
治崎は、の頬に触れた自分の指先を一度見つめ、ゆっくり手を離す。
その言葉のあと、治崎は心の中で呟く。
治(…個性の性質か?それとも本人の資質か?)