第38章 溢れる力、受け継がれる愛 ※微
ドアの向こうから、激しい音が響いた。
(未来さん…本気だ。出久……)
そして3分が経過した。
通形とバブルガールが顔を見合わせ、扉を開く。
通「失礼します!」
バ「終わりました? 最後にすっごい音しましたけど……」
中には静かに立つナイトアイと、肩で息をする緑谷の姿。
ナ「採用だ。ミリオ、。」
「よかった……! おめでとう、出久!!」
驚きの表情を浮かべる緑谷。
印鑑を奪えなかったはずなのに。
ナ「貴様が来ると聞いた時点で採用は決まっていた。使えぬ人材ではないこともわかった。だが認めた訳では無い」
ナイトアイは続ける。
ナ「象徴なき今、人々はかすかな光ではなくまばゆい光を求めている。たとえ彼の意に反しようとも、今誰がその力に相応しいかプロの現場で痛感してもらう」
そう言って印鑑を渡した。
は"彼の意"の意味がよく分からなかったが、緑谷は痛いほどよく分かった。
これは諦めさせるための採用。
オールマイトが選んだ緑谷。
それを認めないナイトアイ。
そして、ナイトアイが選んだ通形。
その間に横たわる深い溝を、はまだ知らない。
奇妙な関係に戸惑いつつも、それでも緑谷は前を向く。
印鑑を押し、無事に契約成立。
ナ「と話がしたい。席を外してくれると助かる」
通形とバブルガールが頷き、部屋を出る。
ドアが閉まる音だけが響き、二人きりの静寂が訪れた。
ナ「…あの少年をどう思う?」
「まっすぐで、まぶしいくらいに純粋です」
ナ「君も同じだよ。だからこそ、危うい。人を救う力を持つ者は、時に自分を削っていることを忘れる」
ナイトアイはの傍まで歩み寄った。
ナ「君の優しさが、君自身を壊す未来を……私は見たくない」
大きく優しい手が、の頭に乗った。
ナイトアイ事務所を出ると、夕暮れの風が静かに頬を撫でた。
3人はそれぞれ思いを胸に、ゆっくりと歩みを進める。
朝、来た道を戻っていくと、寮の明かりが遠くに見えてきた。