第33章 試される力、届かない想い
(この人…この制服…)
推薦入試の映像で見た顔が、目の前にあった。
爆「東の雄英、西の士傑…」
そう口にした爆豪の声が少しだけ低く響く。
数あるヒーロー科の中でも、雄英に匹敵する難関校――士傑高校。
その制服を着た青年が、爽やかに、そしてやたら元気に手を上げた。
夜「一度言ってみたかったっす、プルスウルトラ!自分、雄英高校大好きっす!皆さんと競えるなんて光栄の極みっす!よろしくお願いしまぁす!」
勢いがとにかく凄まじい。
空気を震わせるほどの明るさに、A組の面々は少し引き気味になる。
夜「あーー!!さんじゃないっすかぁ!!」
瞬間、爆風のような勢いで目の前に現れたかと思うと、の手をガシッと握る。
「な、なにっ!?」
夜「テレビで見て、可愛いと思ってました!自分、さん大好きっす!!!!!」
「えっ?あ、ありがとう…」
その一瞬後、空気が変わる。
横からスッと伸びてきた手が、夜嵐の腕を掴んだ。
轟「おい………から手離せ」
低く静かな声。
空気が一気に冷えた。
夜「…………」
一瞬、火花のような視線が交わる。
だが夜嵐は黙って手を離し、戻って行った。
轟「大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
ふっと笑うに、轟の表情が柔らかくなる。
その優しい顔を見て、周囲の生徒たちは一瞬息を呑んだ。
――轟がこんな顔を見せるのは、に対してだけ。
そんな空気の中、相澤がぽつりと名を口にした
相「夜嵐イナサ…」
知っている人ですか?と生徒たちは聞いた。
相「ありゃあ、強いぞ」
その一言に驚く。
相「お前らの年の推薦入試。トップの成績で合格したにも関わらず、なぜか入学を辞退した男だ」
推薦トップの成績。
つまりは、轟や八百万よりも実力が上だということ。
夜「それではみなさん、失礼します!」
士傑高校のメンバーは会場に入っていった。
瀬「雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴るってよくわかんねぇな」
相「だが本物だ。マークしとけ」
その“本当の理由”を、轟が知るのはもう少し先のことだった。