• テキストサイズ

【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第31章 出会った男、不穏な気配


その拍子に、濡れた髪の先から水滴が一粒、頬を伝って落ちる。

それを、治崎は思わず目で追った。
気づけば、手が勝手に動いていた。

タオルを取って、の肩へとそっと掛ける。

治「……風邪を引く」

短い声。
だが、の肩に触れたその瞬間、

治(……また、だ。触れられる……)

治崎の胸の奥で、静かな衝撃が走った。
普段なら、吐き気と嫌悪で即座に手を引くはずなのに。

今はただ、ほんのわずかな温もりを確かめたくて、動けなかった。

はそんな治崎の表情に気づき、少しだけ首をかしげた。

「……大丈夫、ですか?」

治「…ああ。なんでもない」

短く答えた声が、少しだけ掠れている。
タオル越しに感じた体温が、皮膚の奥で残響のように広がっていった。

治(なんなんだ、この感覚は……)

ほんの一瞬の触れ合い。
それなのに、治崎の中の“常識”が静かに軋む音を立てていた。

タオルを肩に掛けたあとも、治崎の手は自然と動きを止められなかった。
濡れた髪が頬に張りついたままのが、小さく瞬きをする。

その瞳が、ふと治崎を見上げた。

何かを問うような、まっすぐな視線。
その無防備さに、治崎は喉を鳴らした。

治(…やめろ。こんなこと、俺がするはずがない)

頭ではそう言い聞かせているのに、指先が勝手に動いた。

タオルを少しずらし、指の背でそっとの頬に触れる。

「……っ」

一瞬、呼吸が止まった。
触れた肌は驚くほど柔らかく、温かい。
それでも、治崎の中に湧き上がる“嫌悪”は、どこにもなかった。
/ 504ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp