第20章 奪われた手、攫われた光
自分だって、誰にも負けないくらいのことが好きなのに。
ずっと昔から、変わらず想い続けているのに。
それでも、どこかで差を感じてしまう。
そのせいで、いつものように強く言葉を吐けなかった。
爆「……行くぞ」
そう短く呟き、少し遅れての元へ歩く。
「勝己、大丈夫?」
の声は、夜の静けさの中でやさしく響いた。
それだけで、胸の奥が少しだけ温かくなる。
爆「あぁ」
短い返事を残し、爆豪は視線を逸らす。
は2人の背中を見送った。
先程の空気とは裏腹にキャーーー!という声が近づいてくる。
どうやら次は葉隠と耳郎みたいだ。
葉「せんせぇ〜…こわかったぁ…」
耳「ほんとびっくりするよ…」
2人を見送り、ほっと息をついた。
森の中はすっかり静まり返り、虫の声さえ遠のいていく。
「あと何組だっけ、はやく終わらないかな……」
呟きながら札を握りしめる。
風が木々を揺らし、ランタンの灯りが小さく震えた。
その時——
バキッ、と背後で枝が折れる音。
気のせい気のせい、と思っても怖い。
ふわりと熱を帯びた風が頬を撫でた。
次の瞬間、青い炎が闇を切り裂くようにぼうっと灯った。
「……っ!!!」
視界に現れたのは、黒いコートに包まれた長身の男。
その周りを青白い炎が揺らめき、地面を焼いていく。
縫い合わされた皮膚、笑っているのか歪んでいるのか分からない口元。
けれど、その目だけは妙に人間味があった。
荼「…よぉ。ようやく会えたな」
低くかすれた声。
初対面のはずなのに、どこかで聞いたことのある響き。
「っ…誰?」
荼「………俺の名は荼毘」
胸の奥がひやりとした。
全く知らない名前なのに、心のどこかがざわっと波立つ。
体を構えようとするが、生徒たちの笑い声が遠くでまだ微かに聞こえていた。
その一瞬の戸惑いを荼毘は見逃さなかった。