第20章 奪われた手、攫われた光
夜。
森の虫の声が響く中、男子棟の一室はまるで戦場だった。
峰「うおおぉぉ!先生マジで天使だったなぁあ!!!」
上「バスタオル姿とか反則だろあれ!!!」
緑「ふ、二人とももうやめてっ!!!」
ドンッ!!
轟の氷が天井まで伸び、爆豪の怒声が重なった。
爆「テメェら!!の名前軽々しく出すなって言ってんだろうがァ!!!ぶっ飛ばすぞゴラァ!!!」
轟「……静かにしろ。……あと、もう言うな」
冷気と殺気に包まれた部屋。
峰田と上鳴は正座で土下座寸前。
峰「ご、ごめんなさい……消しておかずにしようなんて……!」
火に油。
上「ほんと反省してるから爆豪の手、爆発止めてぇぇ!!!」
緑「ひぃいい…!」
バキッ。
爆豪の拳が枕を貫く音が響いた。
そんな喧騒を、廊下の向こうからじっと聞いている影がひとつ。
相澤だった。
生徒の様子を確認しに来たつもりが、耳に入ってきたのは最悪の単語ばかり。
「先生」「バスタオル」「天使」
相「……バカどもが」
低く吐き捨てた声には、冷たい怒気が滲む。
しかしその眉間の皺は、ただの教師の怒りとは違っていた。
脳裏をよぎるのは、夕方、女子風呂へ向かうの背中。
髪をまとめて、どこか嬉しそうにしていた表情。
相「…許可したの、俺だろうが」
自嘲が滲む。
合宿だし、女子たちも嬉しそうだからいいか、そう思って許した。
だが結果はこれだ。男子どもは浮かれ、は無防備すぎる。
相「…ほんと、油断しすぎなんだよ」
拳をポケットの中で握る。
怒りとも焦りともつかない感情が喉を焼く。
自分がのそばにいなかったことが、どうしようもなく悔しい。
それが一番の本音だった。
相「…次からは、俺がつく」
低く、誰に聞かせるでもなく呟いた声が、夜の廊下に静かに溶けていった。