第19章 変わらない日々、近付く影
翌日の放課後。
ホームルームも終わり、生徒たちの笑い声が廊下から遠ざかっていく。
は職員室で書類整理をしていた。
カーテン越しに射す夕陽が、机の上を金色に染める。
そこへ、静かにドアが開いた。
相「…、少し来い」
顔を上げると、相澤が立っていた。
表情はいつものように無愛想なのに、どこか目の奥が揺れている気がした。
「はい、どこへ?」
相「仮眠室だ。…少し話がある」
それだけ言って背を向ける。
は首を傾げながらも、彼相澤のあとを追った。
仮眠室に入ると、夕陽はもう赤く沈みかけていた。
相澤は扉を静かに閉め、しばらく何も言わなかった。
その沈黙がかえって心臓を鳴らす。
「…どうしたんですか?」
相澤は短く息を吸い、ポケットから小さな箱を取り出した。
金属の留め具が、薄明かりの中で鈍く光る。
相「…じっとしてろ」
低く響く声に、は思わず動きを止めた。
背後に気配が近づき、肩越しに感じる微かな体温。
ふと耳のすぐ後ろに、相澤の息が落ちた。
相「……これ、つけるぞ」
指先が髪をすくい上げ、肌に触れる。
冷たい金属が項を滑って、そこからじんわりと熱が広がっていく。
ネックレスの留め具が小さく鳴るたび、心臓の鼓動がひとつ跳ねた。
「なに…?」
相「……動くな。まだ」
囁きがかすれて、息が触れた。
ほんの一瞬、相澤の指が首筋をなぞるように離れていく。
が小さく息をのむと、相澤は短く息を吐いた。
相「お守りだ。いや、正確には発信機みたいなもんだ」
少し間を置き、彼は静かに続けた。
相「万が一の時、それが役に立つ。だから…外すなよ」
そのまま離れると思った。
けれど次の瞬間、背後から強くも優しい腕が回される。
思わず胸の前で息を止める。
相「…何があっても、必ず見つける」
声は低く、震えるほど静かだった。
脈の音が伝わってくる。
やがて相澤はゆっくりと離れ、目を逸らした。
相「…悪い、説明も順番もめちゃくちゃだな」
は微笑む。
「いえ、ありがとうございます」
頬の熱は、まるで炎にあぶられたように冷めなかった。