第16章 見守る覚悟、触れたい本音
放課後の校舎は、静かだった。
は職員室から資料の束を抱えて廊下を歩いていた。
(…ちょっと、重いかな)
そう思いながらも足を止めるほどではない。
いつも通り、のつもりだった。
「おい」
低く短い声が後ろからかかる。
振り返るより早く、腕から資料が抜き取られた。
「あ…、勝己?」
爆豪は眉をひそめたまま、当たり前みたいな顔で資料を抱える。
爆「量考えろ。危ねぇだろ」
「ありがとう。でも大丈夫だったよ?」
爆「大丈夫そうに見えねぇから言ってんだよ」
ぶっきらぼうな声。
けれど、その歩幅はに合わせてわずかにゆっくりだった。
爆豪は気づいていた。
声の張りが少し弱いこと。
肩の力が、ほんのわずか抜けていること。
爆(放っとけねぇだろ……)
理由なんてない。
ただ、気になって、心配で、目が離せなかった。
廊下の角を曲がった瞬間、不意に誰かとぶつかりそうになり、がよろける。
「っ……」
咄嗟に伸びた腕。
爆豪がの手首を掴んだ、その瞬間。
――熱い。
驚くほど、指先に伝わる体温。
一瞬だけ触れただけなのに、はっきりわかる。
爆「…おい」
「だ、大丈夫」
すぐに手を離そうとしたを、爆豪は離さなかった。
今度は手首じゃなく、手の甲に触れる。
やっぱり、熱い。
爆「…熱あんだろ」
「え?」
は自分の手を見つめる。
言われて初めて、少し頭がぼんやりしている気がした。
「…たぶん、気のせい」
爆「気のせいなわけねぇだろ」
言い切る声は強いのに、掴む力は驚くほど優しかった。
爆「無理すんな。……心配になる」
その一言が、胸の奥に落ちる。
(あ……)
自分より先に、異変に気づいてくれた。
ちゃんと見てくれていた。
それが、どうしようもなく嬉しくて。
の胸が、きゅっと縮む。