第16章 見守る覚悟、触れたい本音
「……ありがとう」
小さくそう言うと、爆豪は一瞬だけ視線を逸らした。
爆「礼とかいらねぇ」
資料を抱え直し、少し前を歩く背中。
けれど、歩幅は変わらない。
職員室で、爆豪は資料を机に置いた。
爆「今日は早く休め。倒れられたら……困る」
は一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「……勝己は、優しいね」
それだけ言って、そっと視線を落とす。
深い意味なんて込めていない、ただの事実としての言葉。
けれど爆豪は、その一言に足を止め振り返る。
綺麗な赤い瞳に捕えられる。
爆「……たりめーだろ。好きなんだから」
いつでも、真っ直ぐな想い。
その一言が胸の奥に真っ直ぐ突き刺さった。
は、言葉を失ったまま瞬きをする。
冗談でも、勢いでもない。
逃げ道を用意しない、爆豪勝己の本音。
ひどく真剣で、ひどく優しい目。
その視線に射抜かれた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
嬉しいとか、安心とか。
全部が混ざって、名前のつかない感情になる。
「勝己…」
名前を零すと、爆豪はわずかに眉をひそめて顔を逸らした。
爆「……なんだよ」
でも、その声はいつもより低くて、少しだけ震えていた。
爆(……にだけだ)
心の中で吐き捨てるように思う。
心配でたまらない、放っとけない。
守りたいなんて言葉じゃ足りないくらい、ずっと前から。
誰よりも先に異変に気づいて、誰よりも近くで支えたくて、誰よりも隣に立ちたい。
他の誰かになんて、負ける気もないし渡す気もない。
がその想いを全部知ることはない。
それでも、胸の奥がじんわり熱くなって、理由もわからないまま、少しだけ息が苦しくなった。
(……どうしてこんなに、苦しくて、あったかいんだろ)
爆豪に見つめられるたび、想いを伝えられるたび、その存在が少しずつ、確実に心に染み込んでいくのを感じていた。