第16章 見守る覚悟、触れたい本音
相澤はを無事家まで送り届けた後、想いを巡らせていた。
人を好きになる感情なんて、とっくの昔にどこかに置いてきたと思ってた。
それでも、見てると少しずつ、崩れていく。
の優しさは、甘さじゃない。
弱さでもない。
傷つくことを恐れず、それでも誰かを救おうとする覚悟の強さだ。
その危うさと同時にある芯の強さを、俺は誰よりも近くで見てきた。
気づけば、の横顔を、笑い声を、その小さな背中を、無意識に目で追っている。
守る対象としてじゃない。
一人の人間として、目を離したくなくなっている自分に、遅れて気づく。
教師と教師。
同僚として、守りたい。
助けたい。
それなのに、胸の奥に芽生えたこの感情は、その言い訳を簡単に追い越してくる。
俺が誰かを好きになるなんて、考えたこともなかった。
この気持ちを言うつもりも、ない。
多分、ずっと。
ただこうして、誰よりも近くで、を守れるならそれでいい。
それだけで、今は十分だ。
…そう思っていたはずなのに。
近づけば近づくほど、触れてしまいたくなる。
声をかけるふりをして髪に手が伸びそうになる。
その小さな肩を、もう一度抱きしめてしまいそうになる。
理性が告げる、「もう二度としない」と。
でも心は囁く、「次も、きっとしてしまう」と。
教師としても、同僚としても越えてはいけない。
それでも、どうしようもなく惹かれてしまう。
それでも、明日になればまた同じように隣に立つ。
何事もなかったように、を見守るために。
自分の気持ちだけを、胸の奥に隠したまま。