第18章 …隻眼ノ呪詛
「アラマキ……だったか。おれの船長の首を取れなくて、残念だったな」
ゾロの右目と、アラマキの視線が交差する。
金色の隻眼の奥に潜む『闇』が、更に鋭く光る。
瞬間、もがいていたアラマキの動きが、ピタリと停止した。
闇の魔術……『邪眼の呪い』。
「おれの右目が、お前の視線を捉えた時点で……お前の正気は終わってんだよ」
ゾロは、闇を湛える金色の瞳で、アラマキを冷たく射抜く。
言葉を発する事なく、心の中で静かに、しかし凄まじい怒りを持って呪詛を唱えた。
(……黒い蛇の大群が、お前の皮膚の下を這い、肉を食い破り、その骨髄を腐らせる……死ぬ迄、ずっと見せてやろう……)
「……ガ……ア……?」
アラマキの視界が歪んだ。
無数の『黒い蛇』が体内を喰い破り、心と魂を腐らせて行く絶望的な『幻覚』。
何度肉体を再生させようとも、魂に直接刻み込まれた呪いは、決して消えない。
彼の体に、黒い蛇が這った様な禍々しい痣が浮かび上がる。
「あ……? アアアアアアアッ!? ギャアアアアアッ!! 蛇が!! 体をっ!! おっ、おれの体が、腐るぅゥッ!!!」
海軍本部大将が、無様に地面を転げ回り、己の腕や体を掻き毟りながら絶叫する。
その惨めな姿を見下ろしながら、死皇帝は冷たく静かに吐き捨てた。
「身の程知らずが……これっぽっちの覚悟もねえのに、おれの船長を殺ろうとしたからだ。このおれが赦す迄、そうやって狂ってろ」
ゾロは発狂したアラマキに背を向けると、戦闘領域を解除し、羅刹からデミゴッド……人間の姿へと戻った。
金色だった右の瞳も、何時もの灰色掛かった黒に戻って行く。
「ちっ……レザーに穴が開いちまった……買って貰ったばっかりなのによお……」
眉間に皺を寄せつつ、閻魔を背中の鞘に、アナコンダをホルスターに戻すと、死神とアルベルのいる傍迄、一瞬で移動した。
死神は、戦い終えた主に頭を下げて言う。
「流石は、我が新しき王……『邪眼』をも、見事にお使いこなされましたな。しかし、右の眼だけで呪いが掛けられるとは……やはり、先代以上のお力をお持ちの様ですな」
「ああ、まあ……恐らく、この瘴気のお陰だ。この幽界が、おれの『呪力』を強化してくれたのかも知れねえ」
魔王の言葉に、死神は一度顔を上げるとまた恭しく頭を下げ、進言する。
