第18章 …隻眼ノ呪詛
人間の『生』を捉えた幽界の瘴気が、本格的に森を腐らせ始めたのだ。
「なっ、何だあ!? か、体が……おれの、森があっ……!!!」
巨木を維持出来ず、アラマキは苦しみもがきながら元の人間の姿へと戻って行く。
ゾロは右手に閻魔を握ったまま、左脚のホルスターからコルト・アナコンダを左手で素早く抜いた。
銀色に輝く銃口を、地面をのた打ち回るアラマキに向ける。
「……おれ達と同盟を結んでいる奴が、嘗てこう言ったそうだ。『弱ええ奴は、死に方も選べねえ』ってな……だがおれは『死』を司る。死に方だけは選ばせてやるぜ。このアナコンダで蜂の巣にされてえか? それとも、三刀流でバラバラにされてえか? どんな最期がいいんだ?さあ、遠慮しねえで言ってみろよ……」
「ば……ばっ、馬鹿かお前はっ……!! おれは死にに来たんじゃねえっ……お、お前の……船長の首を取りに来たんだあっ!!!」
声を振り絞るアラマキの思念……その『本心』が、死皇帝に届く。
(おれは、死にに来たんじゃねえ……まだ、死にたくねえ……死にたくねえっ……!!!)
ゾロは目を閉じ、深い溜息を一つ吐いた。
「てめえは……『覚悟』もねえのにルフィの首を取りに来たのか……!情けねえ大将だな……殺る気も起きねえよ……」
呆れた様に吐き捨てると、アラマキに向けていた銃口を、僅かに左……アラマキの右側頭部の更に横へずらした。
ハンマーを起こす無駄な動作はない。
太い指がトリガーへと深く掛けられると、ダブルアクションの重い抵抗を、尋常ではない握力で一気に引き絞る。
.44マグナムを乗せたシリンダーがカチリと回転し、ハンマーが前方に叩き付けられた。
……轟音。
落雷に似た重低音が、幽界の地平線を突き抜ける。
直後、アラマキの右耳から数センチ横の硬い大地が、爆破された様に弾け飛んだ。
凄まじい銃身の跳ね上がりを、ゾロは片腕一本で完璧にねじ伏せたまま、微動だにしない。
巻き上がった土煙が、衝撃波の風圧で流されて行く。
「ひ、ひゃあああああっ!!!?」
撃たれたと思ったのだろう。
アラマキは絶叫した。
至近距離の発砲音で、彼の右耳は一時的に聴力を失った。
ゾロはその右目……隻眼の奥に、強力な覇気と魔力、そして『怒り』を集中させる。