すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第22章 不器用な甘え
「ほら、凜桜ちゃん?」
諒がどことなく遠慮がちに身じろいだ。その声でようやく凜桜が我に返っていく。
「ごめ…んね?」
ゆっくりと、それでも今の彼女にしたら最大限に慌てているのだろうなと取ってわかるほどに体を起こして軽く頭を下げる。その仕草一つひとつが無防備すぎてどことなくかわいらしくも見えた。
だからこそ…住吉はグラスを置いて静かな声で名前を呼んだ。
「…凜桜」
そのたったひとことで空気が一段、ーーー締まった。凜桜はその声に反射的にそちらを見る。
「酔ってるなら帰れなくなる前に帰るぞ」
「…え?」
命令口調ではない。それなのに一切の異論をはさませない温度。
「…代表?」
諒が何かを言いかける前に住吉は立ち上がり凜桜の背に手を添えた。財布から何枚かの紙幣を出せばテーブルに置いてただ一言、『連れて帰る』と…
それは二人のどちらの耳にも説明でも提案でもなく…決定打として届いた。
凜桜はその住吉の手の位置と体温に一瞬で意識を引き戻され、その行動にすぐ理解を追い付かせた。
ーーあ、怒ってるかも…
それは声を荒げるような怒りではない。外で住吉自身の目の前で触れさせたことへの遅れてきた独占欲…
「ごめんなさい…」
そう小さく言えば住吉は何も返さず、ただ背中に添えてる手にわずかに力を込めた。それだけで…ーーー十分だった。
「はいはい、お願いしますね」
「お疲れさまっす」
そう二人に見送られる様に住吉と凜桜は店を後にした。