すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第21章 好きを形に…
そんな中、少し離れた所で着信音が鳴る。しかしくぐもった音…凜桜の物だとすぐに解った。
小さくため息を吐けば凜桜の体を開放する腕。それは無言だったとしても『出てこい』の合図だった。
しかし、出るころには一旦切れる。そのままもう一度、今度は凜桜から発信をする。短い呼び出し音の後に通話は繋がる。
「……瀬乃さん」
その声は落ち着いていた。住吉がいるからとか、そういった事はない。ただ伝えるためだけに用意された声色だった。その声の存在を誰よりも住吉がよくわかっていた。それでいてただ見つめ…止める事もなく、ただ、何を言うのか…それを待つだけの様に…
「はい、……あの、それで…」
一拍置いて凜桜が話し出す。
「…昨夜の事、何ですけど…」
少し間を開けて、ゆっくりと口を開く。
「…一夜だけのものにしてください。私にとっては…それ以上には出来ません…」
それを聞いた瞬間だった。住吉の中で何かが強く、そして確実に音を立てた。
拒絶ではない。後悔でもない…ただ凜桜が自分の意思で一線を引いた。
電話の向こう側の反応は当然解らない。それでも瀬乃がしっかりと見据え、察する男であるのは住吉も気づいていた。
「…はい、…はい……ーーーありがとうございます。」
短かった。それでいて丁寧に通話が切れた。ゆっくりとスマホをおろせばテーブルにことっとおいて、住吉の前に戻ってくる。
あと一歩、もしくは手を伸ばせば簡単に触れる位置。迷いはない。ただ、視線は上げれないままの凜桜。俯いたまま指先だけが行き場を見つけられないかの様に絡んでは離れ…を繰り返していた。
「…俺が選ばせた。とはいえ…」
そっと凜桜の手首を取る。
「瀬乃との関係に凜桜自身が自分で線を引いたんだろ。後悔してないなら…そんな顔をするな」
冷たいようで、温かな声だった。