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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


人けの少ない廊下を抜け、そのまま奥にある非常階段へ向かう。
重い扉を開けると、ひんやりとした空気が頬を撫でた。


後ろから伊地知が入ってきたのを確認して、扉を閉める。



「で? わかったことって?」



僕は壁に背を預けた。


伊地知は小さく頷くと、脇に抱えていたタブレットを開く。
画面を何度か操作して、調べていた資料を呼び出した。



「まず、悠蓮が口にしていたという『あらや』についてです。おそらく、阿頼耶識のことだと思われます」

「あらやしき……」



名前くらいは聞いたことがある。
たしか、仏教の言葉だったはず。



「簡単に言えば、人の意識の一番深いところです」



伊地知は画面に表示された記述へ視線を落とした。



「普段、自分で考えたり感じたりしている意識よりも、もっと深い場所。そこには、その人が経験したことや感情、執着なんかが蓄えられていくと考えられています」

「記憶の倉庫みたいなもの?」

「かなり簡単に言えば、そうです。ただ、記憶だけではありません」



伊地知が画面を指でスクロールする。



「怒りや悲しみ、願い。本人すら意識していないようなものまで、『種子』として残る。その人を形作っているものが、意識の奥に蓄えられていくようなイメージですね」

「しゅうじ……ね」

「はい。その種子が何かをきっかけに芽を出すことで、人の感情や行動に影響を与えるというものです」



心の一番底に、本人さえ気づいていないものが溜まっていく。
それが種になって、いつかまた芽を出す。



「じゃあ、【執】の種子っていうのは? あの真澄って子も、諏訪烈から親友の【執】の種子を渡されたって」

「阿頼耶識に残った【執】……強い執着や感情を、何らかの方法で取り出したものだと考えられます」

「他人の感情を、種にしたってこと?」

「……おそらく。真澄さんの場合、それを取り込んだことで、千尋さんの記憶や感情まで自分のもののように混ざったのでしょう」



それなら、野薔薇たちから聞いた話とも繋がる。

【執】の種子を飲んだ真澄は、野薔薇が知っていた頃とは明らかに変わっていたらしい。

記憶や感情だけじゃなく、その人間を形作るものまで引っ張ってくるってことなら。
術式まで使ってたのも、その影響ってことか。
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