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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


誰かが傷つけば、自分まで傷ついたみたいな顔をする。
誰かを救えなければ、自分の責任でもないのに抱え込む。


あの力が、それに拍車をかけてるんだろうか。



の“送る力”。



あれを使うと、送る相手の魂に残った記憶や感情が、まるで自分のものみたいに流れ込んでくるらしい。

見る、なんて生易しいものじゃない。


痛みも。
苦しみも。
恐怖も。


その人が体験したものを、自分の身体でなぞるように感じる。


魂の擬似体験。


そんなものを何度も繰り返していれば、自分の感情なのか、他人の感情なのか、分からなくなったっておかしくない。


まして今のは――。








「……五条さん」



不意に名前を呼ばれて、思考が途切れた。

顔を上げると、伊地知が少し言いづらそうな顔で立っている。



「何?」

「こんな時に申し上げるのも何なのですが……以前、調べるよう頼まれていた件で」

「……ああ」



すぐに何のことか分かった。

五条家から盗まれた、【執】の種子。
それから、悠蓮が口にした『あらや』という言葉。



「何か分かった?」

「あ、はい……」



伊地知はそこまで言って、ちらりと野薔薇を見る。


その一瞬の視線で、言いたいことはだいたい分かった。
どうやら、ここで話せるような内容じゃないらしい。


僕は膝に手をついて、立ち上がった。



「野薔薇。僕らちょっと席外すね」

「何よ。私には聞かせられない話?」

「大人の内緒話ってやつ」

「その言い方むかつく」

「すぐ戻るよ。が戻ってきたら、ちゃんと休ませといて」

「はいはい。わかってるわよ」



野薔薇が面倒くさそうに手を振るのを横目に、僕は伊地知と一緒に待合室を離れた。
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