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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


***



しばらくして、赤い血液バッグが僕たちの前を通り過ぎていった。
採血室から運び出され、そのまま処置室の扉の向こうへ消えていく。

どうやら、の血は適合したらしい。



「……」



ほんと。
慣れはしても、気持ちのいいもんじゃないよね。

呪術師の仕事は、呪いへの対処。

つまるところ、人間から生まれる負の感情と向き合い続ける仕事だ。


憎しみ。
嫉妬。
恨み。
後悔。


今回みたいな、くだらない悪意も。
その悪意につけ込んで、さらに誰かを壊そうとする悪意も。


僕が受け持つ生徒たちは、これから先も嫌ってほど、そういうものを見ていくことになる。

救えないこともある。
間に合わないこともある。
正しいことをしたって、何も報われないことだってある。

そういう諦めとか、苦しみとか、絶望とか。
そんなものを一つずつ積み重ねながら、人は大人になっていく。

七海も、そんなこと言ってたっけ。


僕は向かいに座る野薔薇へ、ちらりと目を向けた。

紙カップを両手で握ったまま、じっと床を見つめている。
いつもの威勢のよさも、憎まれ口もない。


……まあ、野薔薇は大丈夫でしょ。

今は無理でも、きっと立ち直る。

野薔薇は情が深いところもあるが、他人と自分をきっちり切り分けられる冷たさも持っている。

誰かの不幸まで自分の不幸にして、全部抱え込むようなタイプじゃない。

時間はかかるだろうけど、ちゃんと自分の足で立つはずだ。


問題は――。



僕は、が消えていった採血室の方へ目を向けた。


(……あの子だよなぁ)


恋人だから、僕が過保護になってるだけなのかもしれない。
そう思わなくもない。


でも、は、他人の痛みと自分の痛みを切り分けるのが下手だ。
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