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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


「あんたは、私の……数少ない友達なのよ。だから、さっさとこっち来いって言ってんの。千尋のところじゃなくて……」



我慢してもダメだったか。
涙がぽろぽろと頬を伝っている。

それでも、笑ってやった。



「私のところに帰ってきなさいよ、真澄」



真澄の泣き腫らした顔が、さらにくしゃりと歪んだ。



「……野薔薇ちゃん」

「何よ」

「ありがとう」



礼なんていいから。
さっさと私の手を掴め、真澄。



「もう、分からないの」

「分かんないなら、分かるまで一緒に考えればいいでしょ」

「……」

「一人で勝手に答え出して、終わらせようとしてんじゃないわよ」



真澄が、ほんの少しだけフェンスから離れた。
私の手を取ろうとするみたいに、手がこちらへ伸びかける。



「私、野薔薇ちゃんのところへ帰りたい」

「だったら――」

「千尋が……あと一人って言ってるの」



泣き腫らした目が、ゆらりと揺れた。



「あと一人は……私だったみたい」

「真澄、今は千尋の声なんて聞かなくていいからっ!」

「千尋が私を許さないのか、私が私を許せないのか……もう、分からないの」



私が一歩踏み出した、その瞬間。
真澄が掴んでいた金網の一部がほどけ、赤錆びた鉄線になって私の足首に絡みついた。


同時に、残った金網がの前へせり上がり、行く手を塞ぐ。



「なっ……!」

「真澄ちゃん!」



踏み出した足が引き戻される。
振りほどこうとした手首にも、別の鉄線が巻きついた。

も小太刀を叩きつけるが、複雑に絡んだ金網は一撃では断ち切れない。


たった数秒。
でも、その数秒が致命的だった。

顔を上げた時には、真澄はもう屋上の縁に立っていた。



「私、すごく嬉しかったよ。野薔薇ちゃんが、私のこと覚えててくれて」

「やめろ」

「私と友達になってくれて、ありがとう」

「これ解きなさいよ、真澄!!」

「ふみちゃんにも……よろしくね」



真澄は、泣きながら笑った。







「またね、野薔薇ちゃん」

「……っ、だめぇぇっ!!」




必死に伸ばした私の手は、あと少し届かなかった。
真澄の身体が傾き、そのまま私たちの視界から静かに消えていった。
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