第30章 「善意の逆理 Ⅲ」
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追悼式を控えた礼拝堂には、厳かな空気が満ちていた。
ステンドグラスから差し込む光が、薄暗い堂内を静かに照らしている。
黒いリボンをつけた数人の生徒が、祭壇の準備のために慌ただしく行き交っていた。
入り口でその様子を見ていると、見覚えのある顔が近づいてきた。
「釘崎さん。きてくれたのね」
声をかけてきたのは、私が潜入していたクラスの華道部の子たちだった。
少しだけ目を赤くしている彼女たちを見て、私は短く頷いた。
「……まあね」
私のスマホに届いた一通のメッセージ。
それは、クラスの連絡網から回ってきた『追悼式』の知らせだった。
『Re:bloom』の事件の被害に遭い、命を落としてしまった二人の生徒。
その彼女たちを悼むための集まりが、今日この学校で行われることになっていた。
任務としては、もうここに来る必要はない。
事件の主犯である細井は捕まり、すべて解決しているのだから。
じゃあ、なんで私はまたここに来てんのかしら。
そうよ。の代わり。
あの子なら、きっと来たがっただろうから。
それに、真澄とも会えるかもしれないし。
それだけよ。
「私たち、華道部として祭壇のお花の準備をしているの。釘崎さんも手伝ってくださる?」
「……ええ。もちろん」
本当はただの潜入任務で、華道部なんて名前だけだったんだけど。
まぁ、最後だしこのくらいは。
正面の祭壇には真っ白な布が掛けられている。
祭壇の周りでは、数人の生徒たちが白い花や写真を並べていた。