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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


「この子、頼むわ」

「えっ、あの……」

「いいから! 救急車でも先生でも、さっさと呼んできなさい!」



戸惑う生徒たちを怒鳴りつけるようにして、制服についた土を乱暴に払った。


(逃がすもんですか)


私は人影が消えた屋上を睨みつけ、迷わず校舎へと走り出した。









階段を一段飛ばしで駆け上がり、屋上へ続く重い鉄扉を勢いよく蹴り開ける。


ガァンッ!


大きな音を立てて開いた視界の先、フェンスの前に一人の女子生徒が立っていた。
強い風に、肩にかかった髪とスカートが揺れている。


その音に、彼女はびくりと肩を揺らして振り返った。



「野薔薇ちゃん……?」

「……真澄」



真澄は、困惑したように目を見開いていた。

私と屋上のフェンス。
それから、さっき女の子が落ちたはずの中庭の方へ、忙しなく視線を動かしている。



「真澄、ここに誰かいなかった?」



私が問い詰めると、真澄は小さく首を振った。



「わ、分からない。私も今、悲鳴を聞いて駆けつけたの。どうなってるの……?」



くそっ、逃がしたか。
下にいた子を受け止めてからここまで来た。
その間に、屋上にいた人影が逃げる時間はあったかもしれない。


舌打ちしそうになるのを堪えて、私は踵を返した。



「待って、野薔薇ちゃん」



背後から、真澄の声が追いかけてくる。



「あの子、大丈夫だった? 屋上から落ちた子……」

「なんとか生きてるわ」

「よかった……。でも、野薔薇ちゃんの術式、すごいね。あんなことまでできるんだ」



その言葉を聞いた瞬間、足が止まった。



「……今、なんて言った?」

「え?」

「見えたの? 私の術式」



真澄の表情が、ほんのわずかに固まる。



「……何言ってるの? 昔、話してくれたじゃない」

「呪いが見えることはね。でも、術式のことまでは話してない」



私は金槌を握り直して、ゆっくりと距離を詰めた。



「だいたい、私の知ってる真澄は非術師よ。私の術式なんて、見えるわけねーんだよ」



真澄は何も言わなかった。
強い風が吹き抜けて、彼女の髪を大きく揺らす。



「……お前」



私は、目の前に立つ『それ』に向かって言い放った。















「千尋だろ」




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