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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第30章 「善意の逆理 Ⅲ」


***



野薔薇ちゃんが新田さんと一緒に医務室を出ていくと、部屋の中は急に静かになった。


私は手元の時計に、もう一度視線を落とす。

やっぱり、時間がずれている。
それも少し早く。



「……変なの」



小さく呟いた、その時。





「何が?」



不意に聞こえた声に、肩が跳ねた。
顔を上げると、いつの間にか医務室の入口に先生が立っていた。



「せ、先生……!」

「お見舞いきたよ」



先生は目隠しをいじりながら、ベッド脇まで歩いてくる。



「野薔薇、来てたんだ」

「はい。ケーキを持ってきてくれました」



そう答えると、先生は少しだけ目元を緩めた。



「で? 体調は?」

「大丈夫です。硝子さんが、検査でも異常ないって」

「そ。よかった」



先生の大きな手が、私の頭にぽんと乗る。
その何気ない仕草に、胸がぎゅっと苦しくなった。


明日が来れば、また笑おう。
そう決めたばかりなのに。

先生に触れられるだけで、簡単に揺れてしまう。



「……薬、飲んだ?」



一瞬、息が止まりそうになる。

薬。
アフターピルのことだ。
先生、硝子さんから聞いたんだ。



「……うん」



胸がちくりと痛む。

先生が、もし何かあれば責任を取ると言ってくれたこと。
その言葉は、嬉しかった。
嬉しかったのに、私は薬を飲んだ。



「……ごめんなさい」

「なんで、が謝んの?」



先生の手が、私の頭から頬へ滑る。
親指が、目元のあたりをそっと撫でた。



「僕が責任取るって言ったのは、に全部背負わせないためであって、の選択肢を奪うためじゃない」

「……でも」



先生は少しだけ困ったように笑った。



「僕、そんなに器小さく見える?」

「ち、違います……!」

「じゃあ、謝んないの」



そう言って、先生は私の額に軽く指を当てた。



「ただし……が大人になったら」
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