第29章 川品中央総合病院
椛「ここ外だよ?」
安室「あぁ、分かってるが…」
更に身体を近づけると、彼女の耳元に唇を寄せて囁く。
安室「俺の名前を呼んでくれ…」
あまりにも彼が切ない声で囁くものだから、脳の奥まで響いて、腰が痺れる感覚がした。
更に距離を縮めてくる安室。
2人は鼻先が触れそうな距離で見つめ合う。
椛「零…」
彼女が彼の本当の名前を呼ぶと、まるで吸い寄せられるかの様に、2人は唇を重ねる。
何故彼女に名前を呼ばれると、こんなにも胸が締め付けられる様な感覚がするのだろう。
たった一言だと言うのに、その言葉を聞くと、酷く心が満たされて安心感に包まれる。
彼女から本当の名前を呼ばれるたびに、
『本当はもっと名前を呼んで欲しい』と安室はいつも感じていた。
思いの外、彼からの長い口付けに、
『今日1日で何回、唇を重ね合わせれば私達は気が済むのだろう』
と熱に浮かされた頭でぼんやり思う。
先程はまでは過去の記憶でいっぱいだった脳内も、彼の熱い唇を感じると、一瞬で目の前の彼の事で頭も心も満たされる。
彼の温もりを感じれば感じる程、更に更に愛しい思いが募る。
『命の炎』をしっかりと燃やしながら生きている彼。
しかも時にはかなり強火で…
そんな相手だからだろうか…
いつも一緒に彼といると、『愛しい気持ち』と『切なさ』と『尊さ』が同時に身体中に広がる。
そして何故か酷く『護るべき存在』に感じる。
『こんなに深く誰かを好きになる事なんて、もうこの先、この人以外あり得ないだろうな…』
と高揚する脳内で思いながら、彼の口付けに応えていった。