第29章 川品中央総合病院
安室の説明で少し冷静になってくる椛。
そしてこの際だから、今まで聞きたいと思っていた事は全部聞いてしまおうという意識に落ち着く。
椛「…安室さん達は、何を聞いて、何を知っていたの?」
安室「『何』とは?」
椛「自分で言うのも何だけど…
ヒロ君から何か多少聞いていたんでしょう?
私の事…」
彼女の言葉に当時の事を思い出す。
既に亡くなっているとはいえ、景光のプライドもあるだろうし、何から言うか言葉を選ぶ。
安室「聞いてたと言えば、聞いてたが。
聞いていないと言えば、聞いてないよ。」
椛「どう言う事?」
安室「ヒロは椛さんの事はあまり俺たちに、話したがらなかったからな。」
安室の言葉を聞いて、少し悲しい気持ちになる椛。
いくら付き合っていなかったとはいえ…
そんな人に言えない様な関係ではなかった筈だ…
そろそろ目的地が近づいてきたのか、車は細い裏道を進んでいく。
黙ってしまった彼女の様子を、運転しながら横目で確認する。
先程とは打って変わって、
『しょんぼり』としながら、何かを考え込んでいる様子だ。
安室「多分、椛さんが思っている様な事とは逆ですよ。」
彼のその言葉に顔を上げて目線を向けると、安室は軽く口角を上げて懐かしそうに前を見据えていた。