第24章 逢瀬
「……ホームズもハンニバルも羊たちの沈黙もさ、犯人は逃亡中なのに気に入った捜査官や探偵の前に現れたり連絡したり済んだろうね」
数か月前の事を思いだしていた私に悟はそう尋ねた。
その顔は、映画館でスクリーンをじっと見つめていた時と同じ顔だった。
何かを考えこんでいるような。
何を考えているのかは分からなかったけど、私は私なりの考えを述べた。
「……どんな気持ちとかはわかんないけど、犯人側は息苦しかったんだと思う。生きていくのが。自分じゃどうしようもないから、どうにもできなくて止まれないから、せめて気に入った人や好きな人に殺してほしかったんじゃないかなって……」
言いながら気付いた。
悟がなんであんな質問をしてきたのか。
お兄ちゃんを重ねているんだ、犯罪者側に。
「……お兄ちゃんさ、百鬼夜行する数日前に私に会いに来たんだ。その時はなんで会いに来たのかは深く考えてなくて、会えたことが嬉しかったから。お兄ちゃんを殺そうと思ったのはその時。大好きだから大好きって気持ちのまま死なせてやろうと思った。憎まれて死ぬのは悲しいから。だからそれは私の役目だって思ってた。でも、お兄ちゃんは悟の手で殺されて……。今なら少し分かる。お兄ちゃんはきっと悟の手で死にたかったんだ。親友だから、それがお兄ちゃんにとっての救いで、正しい死だったんだって。……だからちょっと悔しい。私の付け入る隙なんてどこにもないじゃんかって思って」