第24章 逢瀬
「行こうか」
悟はベンチから立ち上がり、手を差し出してきた。
私は一瞬どうしようと悩んだけど、おずおずとその手を握った。
優しく包み込むように手を握り返し私の手を軽く引っ張り立ち上がらせる。
傍から見ればこれは彼氏と彼女の構図だ。
「今日の服、似合ってるよ。野薔薇がチョイスしたの?」
「うん。今日のためにって」
「そっか。すごくっぽくてかわいい」
どうしてこの男はこういうことをさらっと言えるんだろう。
慣れているからか。
今まで付き合ってきた女にもそういうことを言ってきたのかもしれないと思うともやってするけど、嫉妬したところで過去は過去でしかないから、そこを言及しても意味はない。
「あのさ」
「うん?」
「オマエも、その……か、かっこいいと、思い……ます」
言葉尻がどんどん萎んでいってしまったけどきっと悟には届いたはず。
いつものあの真っ黒い恰好ではなく、テーラードジャケットとテーパードパンツといったかっちりとした服を着てる悟はいつにも増してスタイルの良さが一層際立っている。
股下何㎞あんだよってツッコミたいくらいには足が長いし、引き締まった体にジャケットがいい具合でマッチしていているからどこのモデル事務所の方ですかって感じだし、そういうところにスカウトされてもおかしくないほど今日の悟はかっこいい。
周りの人の視線は全部悟に向けられているし。
「……なんか言えよ」
「ごめん。素直に嬉しすぎて語彙力失くしてた」
褒めたのに何も返答がないから不思議に思って悟を見上げれば若干男の頬は赤くなっていて。
照れている悟を見たらすごい嬉しくなった。
勝負に勝ったような気分。
なんの勝負に勝ったのかは自分でもわからないけど。