第14章 明日
逃げる様に呪術師をやめて一般企業へ就職したが、勤務で業績に振り回される毎日に精神的に疲弊していた。
寝ても覚めても金のことばかりを考え、呪いも他人も金さえあれば無縁でいられると。
そんなある日、パン屋で働く女性に憑く低級呪霊を気まぐれで祓ったことで深く感謝をされた。
何度も何度も大きな声で"ありがとう"とお礼いう彼女のその言葉に。
冷え切って固まってしまった私の心が溶けたような気がした。
そこで私は気が付いた。
自分が、本当に欲しかったのは"これだ"と。
"やりがい"や"誰かに必要とされること"を求めていたのだと。
"生き甲斐"などというものとは、無縁だと思っていた。
だが、そうではなかったらしい。
自分の"生き甲斐"のために、私は呪術師の道へと戻った。
「今はただ、君に感謝を」
「必要ありません。それはもう大勢の方に頂きました」
掛けていたサングラスを静かに外す。
「悔いはない」
その言葉に嘘偽りはない。
一つだけあるとするなら。
あの子に謝罪をしたかった。
許してほしいとは思っていない。
ただ、彼がああなってしまった原因が私かもしれない。
子供である彼女の心を苦しめている一因がそれなら、少しでも和らげることはできないかと。
そう思っていたけど、無理そうだ。
死後の世界を信じているわけではないが。
できたらもう一度、灰原に会いたい。
そして謝罪と感謝を。
"死"を覚悟し、ゆっくりと瞳を閉じた。