第14章 明日
拘束されていた両腕。
そのうちの右腕を無理矢理引き抜いた。
ボキッて音が鳴って激痛が襲ってきたから、たぶん折れた。
痛みに顔を歪めながらも、私はその涙を拭った。
「…た、すけ……て」
小さく、ゆっくりと呟かれた言葉に。
ぎゅっと胸が痛くなった。
「たす、け……こ、ろ……して」
「……っ」
「おね、がい……ころし……て」
何度も何度も懇願する姿を見て、歯を食いしばる。
これが被害者の救いになるのなら。
殺すことで、救われるのなら。
私は……。
地面に落ちていた鍵の一つを手にして。
せめて苦しまずに死ねるように。
「"施錠"……」
心臓に鍵を差して、左手を外側に回した。
左手から伝わる、心臓の鼓動が停止する感触。
命の重さが。左手から全身へと流れる。
心臓が停止する直前。
改造された人間は、うっすらと笑みを浮かべた。
「あ……りが、」
感謝の言葉などいらない。
私はお前を殺したんだ。
命を終わらせた。
そんな人間に、お礼なんて、必要ないんだよ。
こみあげてくる何かをぐっとこらえ、地面に転がる先ほどまで動いていた命を見つめる。
吉野。
私は今日人を殺したよ。
だから。
私は今日お前を助ける。
折れた右腕はそのままに。
激痛が走って、吐き気がするけど。
それでも私は行かなきゃいけない。
吉野を助けに、虎杖を助けに、あの男を殺すために。
屋上の怪談を駆け下りる。
走るたびに腕がズキズキと痛んで、その痛みで視界が歪む。
それでも走る足は止められない。