第14章 明日
「俺は、それでも殺したくはないな」
「なんで?悪い奴だよ?」
「なんつーか、一度人を殺したら"殺す"って選択肢が俺の生活に入り込むと思うんだ」
下を向いて、静かに話す虎杖。
そんな彼を眉を寄せてただじっと聞いている吉野。
「命の価値が曖昧になって、大切な人の価値までわからなくなるのが、怖い」
嫌だ、ではなく、怖い。
そう虎杖は言った。
無意識に理解しているんだ。
いずれそうなるかもしれない、と。
それでもそんな場面が来たとしても、殺さないようにしたい。
そう言う覚悟が虎杖にはある。
どこまでも真っすぐでどこまでもいい奴。
こんな殺す事よりも難しいことをやってのけようとするこいつの精神が、いつか死んでしまうんじゃないかと心配してしまう。
こっちがどんなに心配しようと何しようと、虎杖はきっと正しい死を貫くだろう。
そんな気がする。
私は、どうだろうか。
五条悟は例外として、人を殺すことができるだろうか。
わからないや。
もし、私が人を殺したらあいつはどう思うんだろう。
ぎゅっと心臓が痛くなった気がした。