第14章 明日
「母ちゃんいい人だな」
寝ている彼女にブランケットを掛ける吉野に、虎杖がそう言った。
「……うん」
「こんなにいい母親そういないよ。ちょっと羨ましくなった」
「……虎杖君と夏油さんのお母さんはどんな人?」
「俺会った事ねーんだわ。父ちゃんはうーっすら記憶あんだけど。俺には爺ちゃんがいたから」
そう、虎杖にはおじいさんがいた。
だから一人じゃなかった。
おじいさんとの暮らしはどんな風だったんだろう。
今日のような楽しい毎日を送れていたんだろうか。
その時、虎杖にスマホが鳴った。
どうやら相手は伊地知さんらしい。
彼が電話をしている間、私は吉野に向き直る。
「こういうのもあれだけど、私もさ小学生の時いじめられてたんだよ」
「え……‼僕、いじめられてるって言った?」
「昼間から学校サボってる人間は大体不良かいじめが原因で不登校かって決まってんだよ」
「……」
「それに、その前髪の下、ちょっと見えた」
「……そっか」
前髪で隠している額には、煙草を押しつけた痕があった。
見たくて見たわけではなく、見えてしまった。
だから吉野は煙草を嫌ったんだ。
「夏油さんはさ、どうやっていじめから身を護ったの?」
「私?私の場合は……」
「夏油、伊地知さんが電話変われって」
「え?あ、うん。吉野ごめん」
「ううん、いいよ」
私は虎杖のスマホを受け取り耳に押し当てる。
そしたら伊地知さんのか弱い声が届いた。