第14章 明日
ここで私が変に彼女を気遣えば、それこそ彼女を傷付けることになる。
それが解っているから彼女は何も言ってこないし、私も何も言わなくてすむ。
そういうところは、夏油さんは案外大人だと思う。
「手順は伊地知君に任せてあるので、3人で吉野順平の調査をお願いします」
虎杖と伊地知君は敬礼のポーズをして部屋を出ていき、夏油さんはその後ろをついて行った。
と、思ったのにすぐに戻ってきた。
「……ある程度じゃなくて、もう分かっているんじゃないのか?犯人の居場所」
鋭い眼光が私を睨む。
まさかそこまで見抜いていたとは。
軽く息を吐いて、腕を組んだ。
そこまでわかっているのなら、私が何を思って彼らを吉野順平の調査に回したのか、その理由もわかっているだろう。
だけど、ここで素直に「はい」と言ってしまえば、「ついて行く」という可能性もある。
「………いいえ」
「嘘が下手だな、お前。話を聞いただけだからはっきりとは言えないが、犯人はその気になれば残穢なんて残すことなく現場を離れることができたんじゃないのか。そして今も誘い込まれてる。お前ひとりで乗り込むリスクとガキ2人連れて乗り込むリスク。天秤にかけた時、傾いたのは前者。そうだろう」
たったあれだけの説明でそこまで考えが回るとは。
「フゥー……。君は随分と頭の回転が速いですね」
「地頭いいからな」
「自分で言いますか、それ」
眼鏡を押し上げながら息を吐く。
「私を連れてけ。足手まといにはならない」
「……いえ。貴女は虎杖君のサポートをお願いします」
そう言うと思いました。
だけど私は彼女の申し出を即答で断る。
準一級術師で実力があるとはいえ、夏油さんは子供だ。
今まで辛い思いをしてきたから平気だと言わんばかりの顔をしているが、そんなの関係ないでしょう。
自分が傷つくのと自分を傷つけるのとでは大きく意味が変わってくる。
その上、自分を傷つけ相手も傷つけるとなると。
それは今じゃなくていい。
自ら泥沼に足を突っ込む必要はない。
それは、我々大人が背負う義務なんですから。