第14章 明日
「今から夏油さんが派遣としてここに来ます。それまでここで待機です」
「夏油が……?」
「はい。五条さんから電話がありました」
それっきり彼は何も言わなくなった。
それもそうだろう。
まだ子供である彼にとって"人間を殺す"ということは深い傷を作るようなもの。
死と隣合わせといえど、私でも堪えるんだ。
つい最近まで一般人だった彼なら尚更のことだ。
暫くすれば、夏油さんが部屋の中へとやってきた。
想像よりも小柄だった。
夏油さんが身長の高い人だったから、妹の方も身長が高いと思ってしまっていた。
だけど、彼女は紛れもなく夏油さんの妹。
瞳がそっくりだ。
「お疲れ」
夏油さんにそう一言声を掛ける虎杖君の声は弱弱しい。
小さく眉を動かす夏油さんは、何かを言いたそうにするのをやめて私を見た。
「貴女が夏油さんですね。五条さんからお話は伺っています。七海建人です」
そう言って私は手を差し出す。
彼女は一瞬悩む素振りを見せたが、軽く私の手を握る。
たった一瞬の動きでなんとなく察した。
彼女が一体どういう境遇の中で生きてきたのかを。
「五条さんは私の高専時代の先輩です。尊敬できる人ではありませんが」
「あいつを尊敬できる人間がいたら、脳を解剖してどんな思考回路してんのか研究してえわ」
………口が悪い。
私が五条さんの後輩だと知っても兄の事を聞かないのは彼女なりの気遣いなのだろう。
私もむやみやたらにあの人のことを口にしたりしないが。