第26章 事変
――夏油side――
虎杖を追いかけて、駅構内を走った。
無我夢中で走る虎杖の足に着いて行くのがやっとで、でもそれでも見失わずにいられたのは、きっと虎杖が私のスピードに合わせてくれていたからだと思う。
こんな時でさえ、コイツの身体能力に嫉妬してしまう自分が嫌だ。
そう思いながらも、私もただただ無我夢中で走った。
そして曲がり角を曲がった時。
虎杖がその足を止めた。
肩で息をしながら虎杖に追いつき、彼の視線の向こう側へ私も視線を向けた。
大きく目を見開く彼の目に一体何が映っているのかが知りたくて―――。
「ナナミン!!」
「七海!!」
私達の目に映るは、血の海に沈む改造人間と左半身が大やけどをおおい、血を流す七海。
そして七海の身体に触れる真人の姿。
助けようと走り出そうとした私に、私達に。
七海は静かに微笑んだ。
七海が笑っているところを私は初めて見たような気がする。
まるで、穏やかな海のように。
晴れ渡った雲一つない晴天のように。
それはどこまでも優しくて暖かくて。
「後は頼みます」
だから目の前で七海が死ぬなんて信じたくなかった。
パァンッ。
軽い音ともに、七海の上半身ははじけ飛んで、地面に崩れる。
下半身しか残らない七海の死体。
"これ"を七海だと言っても誰も信じてはくれないだろう。
だって、だってさ……そうだろ、だって、こんな……。