第26章 事変
祓って祓って。
目の前の改造人間を。
瞼の裏にこびりつく光景は、日の光に照らされて漂う青い海。
ああ。
帰ってきた。
戻ってきた。
あの海の特級呪霊が言っていた。
"海は万物の生命、源"だと。
つまり人間もまた海から生まれたということだ。
ならばこの、瞼の裏の余白をどうか―――。
戻ってきたのなら、帰ってきたのなら。
瞼の裏の余白をどうかその青い色で埋め尽くしてほしい。
その時、胸に誰かの手が触れた。
この手の感触を私はよく知っている。
「……いたんですか」
私の目の前には、ツギハギの男が薄ら笑いで私の胸に掌を当てていた。
胸から伝わる熱に、呪霊も体温があるんだと知った。
「いたよ。ずっとね」
ずっと。
ずっと居たのに。
気が付かなかった。
「ちょっとお話するかい?君には何度か付き合ってもらったし」
お話……。
何を話すというのか……。
灰原。
私は結局何がしたかったんだろうな。
逃げて、逃げたくせにやり甲斐なんて曖昧な理由で戻ってきて。
灰原。
呪いってなんだろうな。
呪いとは心を残して逝くことなのか。
最期に残るものが呪いなのか。
あの時、私の目の前で死にゆく君が私に残した言葉のように。
呪いを産むのが人間であるように、それを祓うのもまた呪術師にんげんだ。
私の前に高専の制服を着た灰原が現れた。
これは幻覚かそれとも私の妄想か。