第26章 事変
現に今、私の術式は押され始めている。
必中効果範囲内。
宿儺の攻撃は2種類あった。
呪力のあるモノとないモノとで、その攻撃の種類が違う。
それに対応する術を今の私は持ち合わせていなかった。
くそっ!!
くそくそくそっ!!
一つ、また一つと、打ち込んだ鍵が音を立てて壊れていくのが分かる。
これ以上呪力の出力を上げてしまえば私が死に、一般人も死ぬ。
かといってこのままでは私は死なないが、一般人は死ぬ。
命の重さ。
天秤にかけたとき、明らかに後者が傾くはずだ。
合理的に考えれば私が生き残った方がいいに決まっている。
だけど、でも……!!
宿儺の術式に対抗うる術があればいいのに。
私に悟のような強さがあればこんなに迷う事なんてないのに。
畜生がっ!!!
私は呪力の出力を少しだけ上げた。
きっと何人かの一般人はもう助けることはできない、死んでしまっただろう。
でも、だけど、せめて、残っている一般人だけは……。
嘲笑いながら「頑張れ」と煽ってくる宿儺の声が煩わしい。
出力を徐々にあげ続ける私とは対照的に、宿儺は魔虚羅に向き直り見たことない術式を放った。
炎の……矢?
魔虚羅は炎の矢に射貫かれ完全に消滅し、領域も消えた。
共に渋谷も爆発に飲まれ私達の周り一帯は何も更地へと変貌した。
「………ぅ、っ……!!」
今まで立っていた高層ビルや公共施設、そのほとんど消え失せた。
私は、何も守れなかったのか……。
あの時、少しだけ躊躇してしまったから、か……?
完全に天秤を傾けたと思ったのに、私はどこかで私の命も優先してしまった。