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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第1章 幼馴染みは森の中で姫を見つけた




その瞳に私を映されるのが怖かった。頭がパニクって、一瞬でその場から逃げ出したい気分に包まれる。
及川先輩がすぐそこにいる……!

どうしようどうしようこっちを見ないで


『……ぁっ』

知らず知らずに後退っていた足は前へへと動く
右手首を強く、でも痛くない力加減でそっと引っ張られる
気付けば体は月島くんの背後にすっぽり収まっていた
190cm近くある彼の図体は及川先輩から私を隠すのに最適だった

月島くんは何も言わない
その背中がやけに頼もしく感じる


実際に会っても全然平気だと思ってた
普通に、中学の先輩と後輩として接すればいいって思ってたのに…

月島くんの手がまだ私の手首を握ってるのが目に入って余計に情けなくなる


悔しい





アップをしに及川先輩はいなくなるけど月島くんの手は離れなくて、3セット目始まるギリギリまで離れなかった


『日向ナイッサー!!!』

『影山もう一本ー!!!』

『澤村先輩ナイスレシーブ!!』

どんなに応援に集中しても多分いま私はここにいない
集中してるフリ、してるだけ

考えるなって思うほど考えてて
罪悪感が胸いっぱいに広がる







いつの間にか下げていた顔は再びやってきた歓声でゆっくり上がっていく
あぁ、先輩なのが分かっちゃう
見なきゃいいのに見たくてしょうがない

烏野のマッチポイント
ピンサーとして出てきた及川先輩はボールを片手に持ってコートの端へ歩いてく

いまからこの人のジャンサーを拝めるんだと思うと罪悪感は簡単に昂揚感へと塗り替わる

空気が変わる
ボールを高く上げて、低い姿勢から一気に跳躍する
その瞬間ここにいる誰よりも及川先輩は高くなって全体を見つめる
完璧なコース絞りと十分すぎる威力

コートを制する






『………っ』












日向のブロードで点を決め、2セットおさめた烏野の勝利となった
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